息子と過ごした大切な日々

2015年12月17日、21歳の息子が自死。
まだ信じられない、信じたくない愚かな母の懺悔の日々。

『俺 その気になれば 青酸カリ手に入れる事出来るんだけど』

明るく、ごく自然に 息子が、突然にそう言った時があった。


メッキ加工の工程で使うそうで、会社にあると 息子が話していたが、私は何を言ってるのか よく理解していなかった。


ある、と言うなら あるんだろうけど、そんな劇物は きちんと管理されてて、

もし使うことがあったとしても、責任者から使用する分だけ その都度もらっているのだと、勝手にそう思ってた。


まさか、息子が その管理する側だったなんて思ってもいなかった……


月命日の焼香に来てくれた社長さんに

どうして、息子が手に入れることが出来たのか、聞いてみた。


《夜勤の時は、息子が、鍵を管理していた》


愕然とした。

えっ、なんで?

何の資格もないのに?

なんで?


理解出来なかった。


どうして、詳しく、しつこく、息子に聞かなかったのか!?


どんな状況下で仕事してるのか、わかってるつもりに なってた。


グルグル グルグル考えてしまう……


どうすれば良かったのか……

どうすれば、息子を喪わずにすんだのか?


息子が、恥ずかしいと言っても、なりふり構わず、動いてれば良かった……


会社に不信感を感じてしまって、主人に話したら


『でも、会社の備品を盗んだんだよ。

窃盗なんだよ。会社から訴えられても仕方ないんだよ。』

と、返された。


その通り、確かに その通りなんだけど……


感情の持って行き場が なくなってしまった。


お兄ちゃん、泥棒させてしまって

ごめんなさい…

ほんとにごめんなさい……

午前4時

いつも、大体4時前後に目覚める。


どんなに遅く、 日付が変わってから寝た日も、同じ。


しっかりとした(?)死亡推定時刻がわからない息子が、逝ってしまったと、私達家族が考えている時間だ。


書類には、3時頃と書かれてあった。


でも、会社で 最後に息子と会話した方が、

2時30分頃だったと 教えてくれた。


家まで、車で飛ばして 20分。


洗濯物を洗濯機に入れて、食べれなかったご飯を バックから出して 食卓に広げている。

作っておいた、親子丼も 食べている。


主人が、胸騒ぎがして 目覚めた 4時。


今朝も 目覚めて、あぁ またこの時間だ、と……絶望感が広がっていく。


そのまま寝直すことができる日も、 たまにはある。が、大体 考え込んでしまい、グルグルと おちていく……。


何故 あの日 起きれなかったのか!?

どうして、気付けなかったなか!?


息子の顔は、寝顔と見間違うくらい、穏やかだった。

でも、毒だ。

かなりの苦しみがあったはずなのに、物音にも、そんな不穏な空気にも 気付けなかった……。


どうして

何故

どうして、

何故……


答えは出ない

答えは 一生 わからない……

お墓

『お墓、どうしようか?』


うちは お墓がない。まだまだだろうし、

そのうちなんとかしないとね、と話していた。


まさか、こんなに早く しかも息子の為に 探すことになるなんて……


市役所に問い合わせても、墓地の空きはないし、増設する予定もない、と言われてしまい……


どうしよう……


悩みに悩んだ末 主人の実家のお墓にいれてもらうことになった。


お墓には4年前に亡くなった義父が弔われている。

息子もお爺ちゃんがいてくれたほうが寂しくないかなと思い、少し遠いけど、お願いした。


四十九日で、納骨というのが一般的と聞いたが、その日の2月3日は真冬。

雪国なので、お墓は雪にうもってしまうので、ひと冬、お寺さんに預かってもらうことにした。


ほんとは 雪がとけて 納骨できるまで 家においておきたかった。


でも、その時はまだ 長女の状態がわかっていなくて、日中 誰も居なくて、留守の家に

息子をおいておくのもあまりよくないんじゃないか、と言われて 決めた。


七七日で、忌明けにしたので、その日にお寺さんにお願いすることにした。


180センチ近い身長に、80キロ近い体重の 大きかった息子……。


骨箱に納まってしまった息子を

車で 1時間強の間、ずっと抱き締めて座っていた。

抱っこなんて、何年ぶりだろ……と思いながら

……


途中で、国道沿いから 息子の会社の屋根が見える。


あの日 夜勤明けて、 家まで帰ってくる息子の胸中はどんなんだったろうか……。


どんな想いを抱えて、運転していたんだろうか……。


もうその時から、決めていたんだろうか?


私に 相談しようとか、考えなかったんだろうか?


遺された私達には、もう わからないまま。


聞いても、息子は 答えてくれない……。


お兄ちゃん、今は 暖かい所にいるのかな?

静かな所なのかな?

お腹はすかないのかな?

今、笑えてるのかな?


会いたいです。

お兄ちゃんに会いたいです……。