息子と過ごした大切な日々

2015年12月17日、21歳の息子が自死。
まだ信じられない、信じたくない愚かな母の懺悔の日々。

原因

あの日の午後


自宅の鑑識の捜査が終わってから、

息子の会社の方から 電話があった。


息子に会いたいと……

警察から連絡もらって、 病院に向かったら、もう遺体運ばれた後で、と。

家に帰って来るまで、まだまだ時間かかるようだと伝えたら


とにかく 私達に会いたいと…


その時点では、どうしてこうなったのか、全くわからなかったから、


会社の備品を勝手に持ち出して、使ってしまって、迷惑かけてしまって申し訳ありません、と謝罪した。


いろいろ悩んでたようだけど、何故今なのか、急すぎて 原因がわからない。

何か、あったのか?

会社で変わったことはなかったのか?

尋ねたが、

『私達もわからない、変わったことはなかっ

たと思う』

という解答だった。



出向を言い渡されるって言うのは

変わったことじゃ、ないんでしょうか?


確かにいろいろ悩んでる事のある子だっけど、最近は、落ち着いていて大丈夫だと思ってしまっていた。


『原因は 出向命令だと思います。

それしかないです』

次の日の午前中、また来てくれたのに、

つい、言ってしまった。


息子の遺体を引き取りに行ったとき、担当の警察官に教えてもらった。


出勤してすぐ、出向の話をされたようで、

息子さんは、かなり動揺してしまって、

『俺、いらなくなったんですか?』

って、先輩達に 聞いて回っていた、と…。

息子の携帯の履歴が、出向先について、物凄い検索してたって…



会社から、三人来ていて、その中の常務さんが、


『大変 申し訳ありませんでした』

と……。社長ともう一人の人も、同じように謝罪してくれた。


引き金にはなったろうけど、出向だけが、原因じゃない、のはわかってる。

いろんなことが、少しずつ 少しずつ、息子の心を壊していったんだと思ってる。

けど、そのほとんどが 会社が原因。


なんで、大丈夫だと思ってたんだろ

なんで、もっと 真剣に 息子の訴え受け止めてあげなかったんだろ


私に話しても無駄だと思ったんだろな

なんにも変わらないって……


息子は 私にも絶望して、逝ってしまったんだろうか……


今は こころ 落ち着いてるかな

笑ってるといいな

好きなゲーム出来てると いいな……

長女(2)

次女が産まれた時、長女は1歳半。

赤ちゃんがえりを心配したけど、全然大丈夫だった。


《お兄ちゃんがいてくれたから》


その一言に、つきる。


何も言ってないのに、自分から 長女と一緒に遊んだり、絵本読んでくれたり、お散歩いってくれたり……(庭だけど)


息子も、長女も ニコニコ楽しそう。

微笑ましかったし、実際、とても助けられた。


幸せな、ほんとに幸せな時だったな……


いつも、いつも、仲良しだった。

6歳離れてるから、けんかもなかった。


だからなのか……


ショックの激しかった長女は、もう 学校どころではなかった。


心配しながら、次女が一人で登校する毎日。


私は仕事をやめた。

長女から、目を離せなかった。


正直に言えば、息子の所に逝きたい気持ちは、私の気持ちそのもの……

わかりすぎるぐらいに、わかる……

だけど、長女はまだ15歳、これから、これからなのに……

しかも、受験生。ちょうど願書をだす時期。



学校、教育委員会巻き込んで、なんとかかんとか、会う病院探して、受診して、少しだけど、お薬だしてもらって。

毎日いろんな話して。

眠れなくても、夜は一緒に横になった。


少しずつ、ほんとに少しずつ 戻ってきた。


担任の先生も ほとんど毎日のように家に寄ってくれた。


なんとか、卒業式にも出席出来た。


高校は、全日制はやめて、4年かかるが、定時制の午後からの部に入学になった。


まだ、カウンセリングに通っている。

導入剤もたまに飲んでる。

でも、お兄ちゃんの夢はあまり見なくなったみたいだ。


お兄ちゃん……

なんでこうなっちゃったんだろ……


なんで、お兄ちゃんを救えなかったんだろ……


あと 何年かして 向こうで会えたとき、お兄ちゃんは お母さんに笑いかけてくれるのかな……?

長女

長女が、壊れてしまう寸前だった。


元気がないのは、しょうがない…

あまり食欲ないのも、わかる…

ただ、眠れてないのは、わからなかった。


忌引き休暇とたまった有給で、主人はかなり長く側にいて、娘たちに寄り添っていてくれた。


休みがあけ、主人が赴任先に帰った夜、洗濯を干しに二階に行ったら、泣いてる声がする…


長女だった。声を掛けたら もう号泣……

妹が起きてしまうので、居間に連れて落ち着かせようとしたが、だめだった


毎晩、お兄ちゃんが夢に出てくる

死んじゃったのに、いつもニコニコして、普通に笑ってる。自分が死んじゃったの、わかってない……夢で会えるの嬉しいけど、つらいって……眠るの嫌だって……


そして、極めつけ

『お兄ちゃんとこ、いきたい』


ハンマーで殴られたような衝撃だった


私、何やってんだよ!!と


また間違えるのか!?


また、大切な、大切な 子供 失うのか!?


自分の悲しみで、いっぱいいっぱいで、娘たちの悲しみ、衝撃に寄り添う事が出来てなかった……


長女の話を夜通し聞いてた。お互い、泣きながら、長女を抱きしめながら……


その日から暫くの間、娘達が 起きてる時は 息子の事は 無理矢理 頭の隅に追いやるよう、努めた。


お兄ちゃん、ごめんね


でも、お母さん、もう、誰も亡くしたくない……


子供に先立たれるのは、地獄…

ほんとに、地獄の苦しみ……