歪んだ考え
息子の葬儀の後、実家の父は私を責めた。
『なんで、どうして救えなかった?!
なんとかならなかったのか?!』
『悔しくないのか?!』
お斎でお酒が進み、帰宅してからもだらだらと飲んでいた実家の父は、いつも酔っぱらっては、からみ酒になる人だった。
息子が小さかった時も、ちょっとした事で怒り、2歳の息子に
《将来、ろくな大人にならない》と絡むような人だった。
「あぁ、またか……」
お酒のせいだとわかっていても、
今日、この状況下でやられるとたまらなかった。
母に色々止められても、今度は母にからむ始末。
『自分も、救えなかったでしょ……
自分の息子も、そうだったでしょ…』
母にそう言われて 少し、大人しくなっていた。
脱力感と疲労感が半端なく、もう休みたかったが、いつまでも飲み続ける父。
飲まないとやってられない気持ちは、理解できるから 我慢していたが
モヤモヤがたまっていった。
そんな父は、いま、寝たきりになってしまった。
要介護5に認定された。
もう、自力では 水さえも飲めない。
流動食は、消極的延命措置になっている。
止めると、1ヶ月もたない、と言われてしまった。
8年程前、大腸ガンが見つかり、その時点でステージⅣで、発見が遅く、人口肛門になってしまった。
3度の手術。抗癌剤治療。再発。
そして、全身に転移。
大好きなお酒も飲めなくなって、弱ってきた所に、脳卒中を起こしてしまった。
脳の出血場所が悪く、動かせるのは 左手と、左足のみ。
そして、今は脳梗塞も出てしまい、ほとんど眠ってるようなものだ。
息子の名前は、祖父から、一字もらってる。
小さい時は畑で祖父の後をついて、よく遊んでいた。一緒にニコニコしながら、写真に一緒に写ってる。(お酒が入らないといいおじいちゃんなんだが…)
闘病生活を頑張って送っている実の父親に対して、もうすぐ息子に会えるのかも、と羨ましく思ってる私がいる……
こんなことを考えるのは、とてもいけないことなんだろうけど、とても失礼なことなんだろうけど……
私には どこまでいっても、羨ましい……